1986年のキャンプ体験
1986年、夏の北海道ツーリングの帰途。たしか、十和田湖畔だったと思う。
既に9月に入っていたからか、その夜、キャンプ場の利用者は私一人だった。
カップヌードル、缶詰などの食料品は購入してあったが、コンロは持っていない。
「焚き火で何とかなるだろう」くらいに考えていたからである。
だが、火は起こせるとしても、お湯を沸かす容器がない。箸やフォークも忘れていた。
キャンプ場内をうろうろ歩き回った。まずビールの空き缶(350ml)を拾った。
バイクの応急修理用に持っていた針金を縛り、火に掛けられる様にした。
当時は喫煙者だったのでライターはある。拾い集めた小枝ですぐに火は点いた。
一度お湯を沸かして缶を煮沸消毒。二度目のお湯で作ったカップヌードルは美味かった。
枯れ木の枝を適当に折って箸にした。何の木かは知らない。
後で知ったことだが、キョウチクトウなどの枝には毒があるので注意が必要だ。
旭川で買った真新しい小さなテントのなかで、カップ麺と缶詰のささやかな夕食。
急ごしらえのケトルと枯れ木の箸。幸いにも、お腹は壊さずに済んだ。
そのキャンプ場、深夜に「ドドドド!」と何か落ちる音がしてびっくりした。
何だか恐くて調べる気にならず、眠れぬ夜を過ごしたが、翌朝その音の正体が判明。
くるみ大の大きな木の実だった。風に揺れた枝から、それが幾つも落ちていたのである。
くるみ大といっても、くるみじゃなさそうな木の実だった。(画像は洞爺湖畔のキャンプ場)
その後、コンロや調理器具などを買い揃えて何度かキャンプ目的のツーリングに行った。
だが今にして思えば、道具の乏しかったこの十和田湖での食事が一番キャンプらしい。
その場にある物だけで何とか間に合わせる。それが野宿の原点ではないだろうか。
クルマと違い、積載量が限られるバイクは、あれやこれやと積む訳にいかないのだから。